大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島地方裁判所 昭和58年(わ)121号 判決

本籍

広島県府中市土生町一、四八八番地の一

住居

右同

自動車運転教習所経営

橋本次雄

大正七年六月三〇日生

本籍

広島県府中市土生町一、四八八番地の一

住居

右同

自動車運転教習所職員

橋本浩

昭和二〇年七月二三日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官高塚英明出席のうえ審理をして、次のとおり判決をする。

主文

被告人橋本次雄を懲役一年二月及び罰金二、〇〇〇万円に処する。

被告人橋本浩を懲役一年に処する。

被告人橋本次雄において、その罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人橋本次雄、同橋本浩に対し、この裁判確定の日から、いずれも三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人橋本次雄は、広島県府中市土生町一、四八八番地の一において、広島県府中自動車学校の名称で自動車運転教習業を営み、その業務全般を統括するもの、被告人橋本浩は、同校の職員として右橋本次雄を補佐するとともに同校の経理を担当するものであるが、被告人両名は共謀のうえ、被告人橋本次雄にかかる所得税を免れようと企て、

第一  昭和五四年分の実際の所得金額は八、二三五万五、〇〇六円で、これに対する所得税額は四、七〇八万七、五〇〇円であるにもかかわらず、収入金の一部を除外するなどの不正行為により所得を秘匿したうえ、昭和五五年三月一三日、府中市鵜飼町五五五番地の四〇所在の所轄府中税務署において、同税務署長に対し、昭和五四年分の所得金額は、二、〇七一万二、五五二円で、これに対する所得税額が七三二万九、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税額四、七〇八万七、五〇〇円との差額三、九七五万七、七〇〇円の所得税を免れ、

第二  昭和五五年分の実際の所得金額は五、六二一万一、六四七円で、これに対する所得税額は、二、六二二万〇、四〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿したうえ、昭和五六年三月一三日、前記府中税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式により、昭和五五年分の所得金額は、みなし法人所得が欠損で、事業主の給与所得金額が九八五万円であり、これに対する所得税額は、みなし法人所得税額〇円で、右給与所得に対する税額は、すでに源泉徴収された所得税額を控除すると四四万九、三〇〇円の還付を受けることになる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税額二、六二二万〇、四〇〇円と右申告にかかる還付所得税額との差額二、六六六万九、七〇〇円の所得税を免れ、

第三  昭和五六年分の実際の所得金額は五、九六三万八、〇二〇円で、これに対する所得税額は、二、八七二万一、一〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿したうえ昭和五七年三月一一日、前記府中税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式により、昭和五六年分の所得金額は、みなし法人所得金額が欠損で、事業主の給与所得金額が一、〇一二万八、八三二円であり、これに対する所得税額は、みなし法人所得税額〇円で、右給与所得に対する税額は、すでに源泉徴収された所得税額を控除すると五万〇、一〇〇円の還付を受けることになる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の所得税額二、八七二万一、一〇〇円と右申告にかかる還付所得税額との差額二、八七七万一、二〇〇円の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人橋本次雄、同橋本浩の当公判廷における各供述

一  被告人橋本次雄の検察官に対する供述調書(二通)

一  被告人橋本浩の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書(三通)

一  被告人橋本次雄の大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)

一  被告人橋本浩の大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)

一  橋本菊子、松原敦美の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官竹中衛作成の調査書(三通、検6ないし8号)

一  大蔵事務官関一晴作成の調査書(五通、検9、10、12、14、38号)

一  大蔵事務官岸野憲二作成の調査書(二通、検11、13号)

一  大蔵事務官岩崎巌作成の脱税額計算書(三通、検2ないし4号)及び脱税額計算書説明資料

一  押収してある所得税の確定申告書綴(三綴)(昭和五八年押第六二号の1ないし3)

(法令の適用)

一  被告人橋本次雄

同被告人の判示第一、第二の各所為は、刑法六〇条、昭和五六年法律第五四号附則五条により同法による改正前の所得税法二三八条一項に、判示第三の所為は、刑法六〇条、所得税法二三八条一項に各該当するところ、その免れた所得税の額が五〇〇万円をこえるので、情状により同条二項を適用し、所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、同被告人を懲役一年二月及び罰金二、〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

二  被告人橋本浩

同被告人の判示第一、第二の各所為は、刑法六〇条、昭和五六年法律第五四号附則五条により同法による改正前の所得税法二三八条一項に、判示第三の所為は、刑法六〇条、所得税法二三八条一項に各該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に決定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 三島昱夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例